%83g%83%89%83L%83A%83%8D%83P08
Chthe'ilist / Le dernier crépuscule (2016)

カナダ産デスメタルバンドの1stフルアルバム。
Profound Lore Recordsからリリースされた。

Beyond CreationのDrで知られるPhilippe Boucher氏やDemilich系のイカれたデスメタルに現代流アレンジを施すZealotryでGt, Vo (backing)を務めるPhilippe "Pat" Tougas氏等によって結成されたカナダの新鋭アヴァンギャルド/プログレ/テクニカルデスメタルバンドがChthe'ilistである。

なにやら今年ちょいと話題の一枚だがこれは何に話題といえば至ってBeyond Creationのようなオーヴァーグラウンドのデスメタル界隈ではなく前述のZealotryやらHalberdやらAtaraxyやらFunebrarum等の所謂現代のアンダーグラウンド界隈を席巻する性質の凄まじい暗黒であるようだ。

音像を俯瞰してみるならばやはりZealotryのGtVoに依るものが大きくDemilichの脱構築的なリフレインや流麗なギターソロを主軸に畳み掛けられる。
そこにDeathspell Omegaの不協和を取り入れたGorgutsとの共振とも言うべき曲によりスラップ奏法を用いる硬質なベースの音と変態的な拍子のリズムチェンジの多い盲目的なまでに技巧的なドラミングの強いアプローチがデスメタルにはある種アヴァンギャルド的とも言える小気味の良いグルーヴを孕ませている。

それを覆うようにしてEvoken系列の終末思想的な闇の趣を引き立てるシンセサイザーの音色や曲間に穿たれた吐瀉のコラージュSE等が病んだ露醜的な世界観の構築を醸し出し、更に狂気に塗れたFleshgod Apocalypseに比肩するオペラティック的で劇的なツイングロウルが時折Obscuraみたいな語り部然とした手法を用いながらにしてその全てを引き立てている。

所感ではこの各パートの技巧力が目覚しくあり上述を見やればお解り戴ける様に幾重にもこのデスメタルを構築する諸要素が折り重なった猥雑な概観を呈しながらも、何か不明瞭で模糊として澱んだ空気感の中で一際輝き始める純然たるメタルサイドのギターソロや混沌としたグルーヴから一転してハードコアないしグラインドコアライクな速さを生み出すドラミングが茫漠たるカオスの裡に対比の展開美を産み落とし聴手に対してより一層のこと琴線に触れて行く。

例えば澱んだ水面の内に漂う白い骸が敬虔なクリスチャンの官能を誘うように、それは確実にアンダーグラウンドサイドの代物ではあるのだが作品のコンセプトとしてダークファンタジーが取り上げられている通りこれに関してもそういった毒々しさの吐露に比類なき良さを放つ代物でありながらにして単に闇に塗れた哲学的な好事家以外にも訴求し得るべき誰もが心の奥底に秘めているような昏く幽玄で神秘的な世界と同質の構造美といった霊的空間的な陰影を作中に上手く落とし込んでおり、それらは楽器隊の音楽の深奥を突くかの如きヴァラエティに富んだ聴かせ方とも相まって、やはり本作は昨今のアンダーグラウンドデスメタル界隈の中でも傑作の部類に入るクオリティの作品だと断言したい。

曲目は、

1. Le dernier crépuscule  03:14
2. Into the Vaults of Ingurgitating Obscurity  07:37
3. Voidspawn  07:18
4. Scriptures Of The Typhlodians  06:29
5. The Voices from Beneath the Well  07:41 
6. Vecoiitn'aphnaat'smaala  07:02
7. Tales of the Majora Mythos Part 1  13:27 

total  52:48  

#4はyoutubeにリンクしてあります。
231566