US産デスメタルバンドの3rdフルアルバム。
Dark Descent Recordsからリリースされた。
バンド名を直訳すれば、恐ろしいといった旨の形容句からなるHorrendous、
前作に引き続きBrian Smith氏の手がけるアートワークも名前との相乗効果によって澱んだ感覚を与える。
早速だが、前作から1年を経て制作された本Anaretaについては、短いスパンでのリリースにも関わらず、
過去にあった音像の踏襲では終わらない上、聴手に聡明な感動を落とし込む仕上がりとなっており、
叙情的かつキメラティックなバンドの方向性を提示するに相応しい快作、
並びに、存在を10年代に於けるデスメタル界隈の代表格にのし上げるべき一撃を呈している。
と言うのが、購入後20数回程聴いた時分での印象を大分脚色したものだ。
私が抱くバンド乃至その音楽性への印象としては、
一般的に存在しているオールドスクールなUSデスメタル、あるいは技巧的なUSデスメタルとは別種の、
トラディショナルな領域に重きを置き、尚且つ時流の流れの一端を担うような、言わば近年デスメタルの愛好家から注目を集める若手スウェディッシュデス界隈の
Tribulationや、今年の9月に非常に惜しくも解散してしまったMorbus Chron等を彷彿とさせる姿勢を感じる。
それには至って冒頭で述べた通りで、過去にあった音像の踏襲ではなく、前二者と同様とも言えるバンドの音楽的変遷的な部分での面白みも感ぜられるからだ。
本作にて、どのような音楽的変遷が巻き起こったかを有り体に述べれば、アルバム序盤でのAtheist風とも言えるジャズ要素の強いリズムセクションや、
アルバム全体での、バンドの初期やThe Black Dahlia Murder等に於ける正統派メタルと共振するべきソングライティング上の情感的なギターソロの様式美が、前作で聴けた独特の陽性を伴って畳み掛ける音像の中で主張することにより、前作での乾いたミキシング効果によって醸し出されていた、スラッシュメタルや普遍的なハードロックの要素を排他して、Dismemberからモロに影響を受けていたと思しきバンドの1st時(The Chills)の空気感を呼び戻しつつ新しく知的な空間を意識的に構築することで、Triburationの2nd~3rdを彷彿とさせながらも、独自的な暗黒の中で爆ぜ散るような激しい生命力を生み出している。
それが、本作の性質として呼ぶに納得のいくものであり、同時に音楽的変遷と形容するに足る事柄であろうと思う。
また、後半に挿入されるインストパートでは幽玄な雰囲気も漂わせており、アルバム全体での一貫性、展開美も感じさせる。
スウェディッシュデスフォロワーバンドのスウェディッシュデスフォロワー時期というのは、スウェーデンの堅実主義なお国柄の反映されるところで、
そこから様々なレスポンスや時流の流れを感じ取ったバンドが、これまでと異質な音楽をやりだすというのは、ごくノルマルな話であろうと思うのだが、
少し例外的なUS産の本Horrendousに於いてもご多分に漏れずで、当時はスウェディッシュデスのリバイバル的な商業価値の中でそのようなことをやっていただけに過ぎないバンドが、
Dark Descentとの謎の化学反応により、昨今のスウェディッシュデスリバイバルムーブメントにて、リバイバル精神だけで終わらない耳新しさの在る、亜流スウェディッシュデスと言った形を提示できるだけの技術力を持つバンド、またその一風変わったデスメタルの面白さが認知されたのが前作であり、
そして、本作に至っては、更にそれを凌駕するべき、近年のデスメタルというのは面白過ぎると言うことを裏付ける快作に仕上がっているのではないだろうか!!!
端的に言えば、Dismemberの音像が、リズムチェンジや変拍子を以て知的に再構築されていて、
その急転直下の展開美と、醜美或いは静動の対比を叙情的に際立たせる性質が、Horrendous独特の陽性と合成されたような作品となっている!!!!!!!!!!!
曲目は、
1. The Nihilist 04:55
2. Ozymandias 07:06
3. Siderea 03:37 instrumental
4. Polaris 04:23
5. Acolytes 07:01
6. Sum of All Failures 05:23
7. Stillborn Gods 05:47
8. The Solipsist (Mirrors Gaze) 06:04
Total 44:16
#1はyoutubeにリンクしてあります。
Brian Smith art
bandcamp Anareta
コメント