048dcm7c1r
Vattnet Viskar / Settler (2015)

US産アトモスフェリック/ポストブラックメタルバンドの2nd。
Century Media Recordsからリリースされた。

轟音系のアプローチと静動の対比を持つブラックメタルのバンドアンサンブルは、LantlôsやFen、Deafheaven等に類する物と言うのは、
毎夜質実に荒涼とした音楽愛を深耕している根からのブラックメタル人間であれば、既に周知の事実であろうと思う。
それらは、次世代型のアティチュードを執ることによって、既存の音楽へのアンチ精神を保っている。

この傾向は、本Vattnet Viskar/Settler にも当て嵌まることであり、
静動の対比から成る轟音系のアトモスフェリックブラックメタルの正攻法と言えた前作を、確実に唾棄してきた。

先ず一曲ごとの長い尺で、深い味わいを呈してくるで馴染み深いこのジャンルであると存じる私だが、
本作は一曲の尺が4分~6分という、比較的短い物と成っていて、
その面だけを見やれば、Lantlôsの名作.Neonを彷彿とさせてくるものだが、
その感慨の中にも、作中で何処か日本のラウド系にも似たコマーシャリティを感じさせてくる。
それは、先で触れた尺云々と、単発系の展開を以って駆け抜けていくやり口や、また単純にトレモロ主体で激情的なリフを奏でるギターワークが共振する所為に思う。

この潔いとも言える作風は、それでいて纏まった楽曲と形容するに足るものと信じられる。
単発系の展開が多いのに纏まっていると言うのも可笑しな話と思われるかもしれないが、
言わば、グラインドコアの構築力にも類型できる一貫性が、ポストブラックメタルの様式美を以ってして急速に畳みかけてくる為、
その纏まり、一貫性、すなわち全体での統一感を想起させるのである。

そして、この全体に漂うポストブラックメタル特有の希望にも似た陽性が、
流動的な価値観を持たないブラックメタル人間の琴線に触れるかは、
と言うか、どの場合に於いても畢竟その方次第なのだが、
単に現代のメタル作品の本作、と言う風に間口を広げてみれば、
十二分にコマーシャリティと、オプティミスティックなイマジナリーを受胎できる作品に仕上がっているので、
結果としてこれは、遍く全ての世界重金系音楽愛聴家に聴いて知られるべきものと存じます。

初めて会った知らない方なのに、何処か馴染み深いわと言うことが日常でも在るだろう。
大抵は、昔の知り合いに似ているものなのだが。

そういった程度に郷愁の念を想起させる若々しいjrock色(ださい)が、
激情的なポストブラックのスコープを通して、本作には収められているのです。

いや、と言うよりも今回は、
近年では唯一マイナージャンルでメジャーな成功を収めていると言える、
このポストブラックメタル界隈の、
そこに位置する、一若手ポストアトモスフェリックブラックメタルバンドが、
多角的な方面へ枝葉を広げる為、ハードコアちっくなアプローチを執った結果、
前作で聴けた突進力が誘発的に主張を見せ始め、薄らとグラインドコア的な展開美を構築した。
そしてそれは、若々しく聴きやすい。
と言った形で、簡潔に纏めたく思う。

曲目は、

1. Dawnlands  04:08
2. Colony  04:16
3. Yearn  04:14
4. Impact  04:15
5. Glory  05:27
6. Heirs  06:11
7. Settler  03:57 
8. Coldwar  06:45
 
Total  39:13  

♯6はyoutubeにリンクしてあります。