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Doomed / Wrath Monolith (2015)

ドイツ産一人デスドゥームプロジェクトの4th。
重さには定評のある、Solitude Productionsからリリースされた。

Pierre Laube と言う方のプロジェクトで、
芽は出ていないが、P.H.A.I.L.というRammsteinみたいな音楽を嗜好するバンドのベース/ドラムも勤めている。

レーベルメイトのDoom:vsや同国のOphisにも近しい、所謂00年代半ばを通り過ぎた辺りで薄ら潮流を見せ始めてきた、My Dying Bride系の重たいデスドゥームである。
またそのSolitude Productionsがリリースした時点で、調子外れな事はしてこない至って高クオリティの作品だ。

ただ、得てして巷に流れている一般的なデスドゥームやゴシックメタルには、
黴臭さの濃厚な仄暗いシャトーの如きサウンドスケープがあるものだが、
この方のデスドゥーム観には、少し倒錯したところが在って、ジャケットからもお分かりいただける通りで、黴シャトー云々とは別の方向性での趣がある。

これは私たちのイメージにあるゴシック建築ではなく、PS3のENSLAVED然としたトラッドで二次創作物チックな世界観での構築美が投影された、独創的な空間を映し出す。
それ故にペーソスは希薄で、他に類を見ない音に成っていると言いたい。
Wrathとタイトルに冠している通り、何処となく怒りやエクストリームな匂いが、暗黒耽美の香炉から漂っているのである。

全体としては、先述の通りの重たいデスドゥームに、音自体は変わりはないのだが、
精神性として怒りが纏わりついていると言うことで、
巨人が暴れているような阿鼻叫喚の様相には、フューネラル系(Esoteric等)との共振も強い。

また、♯4で聴けるシンセワークには、Rammsteinへの傾倒、
♯3中盤でのクラシカルな展開、♯5のクリーンパートや鍵盤の音色で締める全体の構築力には、Lacrimosa然とした叙情性を感じさせる。
こうしたことから、ドイツの幽玄な重みから影響を受けた方なのだろうと思う。
と共に、その両者が影響を受けたと公言しているモーツァルトからの流れも汲まれていると推量する。

結果、デスドゥームの高いクオリティに、ファンタスティックな遊び心が内包された。
所属のレーベルカラーとMorbid Angel等を想起させるエクストリームな趣が、高い次元で融合した作品に仕上がっており、秀作と形容するに足る優良な展開美も携えている。

アトモスフェリックで独創的なメロディセンス、
心を誘起せしめんとする様が、当然の如く琴線に触れるのです。

曲目は、

1. Paradoxon  12:13   
2. Our Ruin Silhouettes  06:13   
3. Euphoria’s End  09:14   
4. The Triumph - Spit  09:37  
5. Looking Back  08:21   
6. I’m Climbing  05:02   

Total  50:40

♯4はyoutubeにリンクしてあります。