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Zatokrev / Silk Spiders Underwater... (2015)

スイス産ドゥーム/デス/スラッジメタルバンドの4th。
Candlelight Recordsからリリースされた。
「血吸いを待ち受ける城の蜘蛛」なるアートワークに惹かれ購入した次第。

2002年から活動する4人組で、Vo.Gt、Gt、Ba.Vo、Drumsと言った編成、本作からGtの片割れが変わっているようだ。
また聴けば♯5♯6では、チェロ奏者が参加している。
稀に女性のコーラスも響く。

4人でのシンプルな編成のバンドだが、重厚である。音が。

苦悶の歌唱とトラッドなノーマル声、それに交わる激重方面に振り切った動と、クリーン/アコースティック/トラッド/エクスペリメンタル等の素養を用いて、前衛的な静を演出するバッキングにより織り成される、
静動の対比や、激重と前衛性との共存を嗜好するスラッジドゥームと言えるもので、
感覚としては、Minskにも近しいスタイルと言えよう。

また、スイス産だけにとは言えないが、
時折Triptykon系列の仄暗さと、マイエンフェルトに代表されるスイスの大自然を讃えたような畏敬の念も感じさせており、
この仄暗さと、悠久の大地を思わせる土着的な感性が、得てしてポスト/エクスペリメンタルかつトラッドな素養として露発されている。

そのため誤解を恐れずに言えば、Triptykon、他にもUlcerateやNero Di Marte等に類されるべき繊細な暗黒の雰囲気を伴った、
Minskと言った感覚で聴きとおせるような、重厚な作品に仕上がっている。

とりわけユニークな作品中でも中盤~終盤には、前述したバンドアンサンブルの中でのポスト/エクスペリメンタルかつトラッドな素養が、徐々に精神の青い炎を煽ることにより、
時折感ぜられるその繊細な暗黒の雰囲気を脱して、普遍的なシャーマニズムが到達せしめんとする、グレートスピリッツ然とした雰囲気を放出してくるので、
結果としては、様々な情景の移ろいゆく様の見事な、概ね芸術性を邁進していく最近のポストドゥーミーな世界に落とされた作品に違いない。

ただ概念的な音楽ではあるものの、根底の部分では、ヒシヒシとドゥームスラッジの匂いを漂わせているので、イマジナリーな領域で前衛性を保ちながらも、絶妙な塩梅で激重の体裁を乱していない。
暗くとも聴衆を掻っ攫うダイナミズムと荒々しさが、自己内的な所の深層にある蛮族の血を滾らせている。

最終的には、そういった絶妙とも曖昧とも散漫とも受け取れる感性が、取っ付き辛さを醸し出しているのだが。

曲目は、

1. Runaway Soul  06:52 
2. Bleeding Island  05:58
3. The Phantom  06:36 
4. Loom  08:17
5. Brick in the Sky  09:02 
6. Discoloration  09:42 
7. Swallow the Teeth  06:10
8. They Stay in Mirrors  12:01 

Total  01:04:38  

♯2はyoutubeにリンクしてあります。