a1073997737_10
Nero di Marte / Derivae (2014)

イタリア産プログレッシブデス/ポストメタルバンドによる2ndフルレングスアルバム。
Prosthetic Recordsからのリリース。

Prosthetic Recordsは、ソリッドな音像を好んで発信しているように思う。
それはこのNero di Marteの音像に於いても当て嵌まることで、一貫して変拍子に揺らぎつつも強靭なグルーヴが感じ取れる訳だが、
実の所は、それだけではない何かを秘めている。

Amebix~Neurosisに続くクラスト~ポストの流れを、Meshuggah寄りで受胎した、
Today Is The Day~Ulcerateに続くカオティック~テクニカルデスの流れを、Gojira寄りで放出した、

そのどちらとも言える本作の作風は、マシーナリーなのに肉感的、露悪的なのに芸術的、音に覆い被され嬲られ、受容される、獰猛にして、静謐。
情景として明瞭に浮かび上がる、果てしない暗黒の大海で捻じ巻き、渦巻き、苦悶の表情を浮かべ、哀切の咆哮を上げる様には、その岸壁に佇む異形を彷彿とさせ、
瞬間的に織り成されるカオティックなバンドアンサンブルは、一瞬のなかに秘められた無限の衝動性を持ち、聴き手の脳髄を揺らすのだろう。

もっと端的に誤解を恐れずに言えばMeshuggahのBleedと言う名曲が在るのだが、その濃縮された「殺し」の一瞬に秘めた静謐なる暴虐性と共振する音像なのではないだろうか。

率直な言葉にして漏れ出るのは、静と動の対比の見事さやら、動の能動性やら静の先進性やら、静パートの中での推進力やら、
苦悶のボーカルワークやら、音数が多くともフィーリングを忘れないウィットに富んだドラミングやら、
不協和音や暗く澄んだアルペジオを随所に散りばめるギターワークやら、無限にブリブー言わすベースラインやら、
うねる楽曲の中に同居するソリッドな強靭さが大変良きで、
つまりは能動的なポストメタルとしても、芸術的なデスメタルとしても秀でた作品と言える。

(MetalSucksの)ムス大佐は14年の年間ベストの一つに挙げていた上、
敬愛するむじかほさんにいたっては同類企画に於いて1位に挙げていたことにより、
このアルバムが如何に秀でた作品であるかが裏付けられることになるだろう。

そういった事象から踏まえた上では、正直なところ過去のアルバムみたいな瘴気が立ち込めるものなのですが、畢竟音が良いのなら、問題もないでしょう。

過去なら過去のアルバムでもって、ふとその遺産を漁る機会に、
この一文が何かの音楽愛に対し、何かしらの揺らめきを棹させることが出来ることが叶えば幸いです。

曲目は、

1. L'eclisse  08:13  
2. Clouded Allure  06:05 
3. Pulsar  08:30 
4. Dite  06:31  
5. Simulacra  08:20 
6. Il Diluvio  09:00  
7. Those Who Leave  10:15 

Total  56:54  

♯6はyoutubeにリンクしてあります。