Imperial-Triumphant-Abyssal-Gods
Imperial Triumphant / Abyssal Gods (2015)

US産テクニカルデス/ブラックメタルバンドによる2ndフルレングスアルバム。
Code666 Recordsからリリースされた。

早速だが、このバンドには、Relapse所属のテクニカルデスメタルバンド、Pyrrhonのベーシストとドラマーが在籍する。
リズム隊が参加していると言うことで、音像としてもPyrrhonの持ち合わせるノイズやサイケデリック、またカオティックコア萌芽期からの異端的な流れを感じさせる訳であるが、音に漂う雰囲気から汲み取れば、闇の瘴気を振り撒き荒れ狂うArtificial BrainやUlcerate、Giganとも近しい恰好を描き出す様子が窺える。そして聴けば、上記のバンドと同様に黒くもあもあとしたやべえ暴虐性に誘われ、引き摺り回される。

また、曲間、曲の転調する隙間に組み込まれるSEや、バンドサウンドの後方で時折繰り広げられるドラマティックなバックコーラスには、曠劫と揺蕩う神聖さや、破滅を匂わせるような所が在ったり、全てが散った最後にはジャジーに薫る部分が出てきたりするので、全体で聴けばその界隈のブラックメタル然としたムードも漂う。
言わばCode666 Recordsのムードで、Relapseのカオティック面や、Season of MistやProfound Lore等にて聴けるバンド群の、一貫したアートセンスを信仰する、無上の産物なのだ。

なお、闇の瘴気を振り撒き荒れ狂うと言うのは、多くのテクニカルデスがジャズを嗜好するようになり、ブラックメタルが沢山の人の目に認知され、カオティックコアやノイズが後続から見渡せる時代に進むことにより、此処に来て愈々這い出てくるのであろうと思わせる音像への、長い形容句であるのだが、
こういった音楽は、一聴して解りがたく、後々になってから瘴気に飲み込まれるかの如くに、じわじわと侵食されるが為、現時点での真っ当な評価と言うのはムズい。
この先、無上の産物などというのも誤った解釈となるやもしれないが、常に新しい意見のみが正当な訳ではなく、超直感的な率直で原始的な意見こそが的を得ていることも良くあるので、この一文については、その旨を当て嵌めて戴きたい。

時に、一貫したアートセンスと言うのは、往々にして評価され得る要因であり、求めるものによっては、無上の喜びを齎し得る表現と言うことであるのは、客観的に、また主観的に見ても納得のいくものであろう。
例を挙げれば、Artificial BrainやUlcerateやGiganと、並びにSeason of Mist時代のGorguts等が持ち合わせる音像、瘴気、その作品に対しての後の評価を、世界のメタル系ウェブジン等で見てみよう、すると年間ベスト選出や、9割以上の評価など、何方も皆持たれるべき真っ当な賛辞を得ている。
そういった因子を踏まえるのなら、前述のバンド群に共振かつ比肩する音像、且つテクニカルデスの系譜から見やれば、この神聖と破滅の二面性を孕んだとも言える、精神面の方向で独自性の濃厚な本作も、例に洩れずに評価されるべきであろう。
総じて、おサイケに闇の瘴気を振り撒き、教会を滅茶苦茶にして消え去り、ノイズ/テクニカルデス/ブラック/サイケの融解点でひたすらに荒れ狂い、崩れたシャトーを再構築する。
決してジャケットに限った話ではなく、音としてもそんなような情景を彷彿とさせる怪作に仕上がっておる訳でありまして、Code666 Recordsの持つ破滅的な方向性が少し懸念的ではあるが、多くの人の琴線に触れることを祈り、此方に紹介させていただく。

なお、本作では、Profound Loreに所属するBloody Pandaにてリードボーカルを勤めるYoshiko Ohara女史が、合唱団の一角として参加しており、神聖かつ破滅的なバックコーラスに花を添えている。

曲目は、

1. From Palaces of the Hive  04:23   
2. Abyssal Gods  02:08  
3. Dead Heaven  04:34  
4. Celestial War Rape  01:36  
5. Opposing Holiness  03:43 
6. Krokodil  08:13 
7. Twins  04:07 
8. Vatican Lust  02:44  
9. Black Psychedelia  06:23   
10. Metropolis  04:01   

Total  41:52 

♯3♯9はyoutubeにリンクしてあります。