2001
Lord Mantis / Death Mask (2014)

US産ブラッケンドスラッジメタルバンドによる、3rdフルレングスアルバム。
Profound Lore Recordsよりリリースされた。

今年最終作を発表したサイケデリックブラックメタルバンドNachtmystiumのギタリストに、
同じブラッケンドスラッジのIndianのドラマーを配していることで知られるバンド。
本作に至ってはIndianのボーカルもゲストとして参加している。

なお前作で弾いていたギターの片割れは既に脱退しており、
今作から新たにAbigail Williamsと言うメロブラバンドのギタリストを加入させている、
これは知る人ぞ知ると呼ぶに相応しいまでの存在感が在るのではないだろうか。

以下は、心に留まった本作の音楽性について、あたしが独善的に述べている。

前作は埃っぽいスラッジ要素とDeathspell Omega張りのドス黒いブラックメタル要素を融合させ、
それをストレートに聴かせると言う、
いわば「コマーシャリティのある不快ブラッケンドスラッジ」(どっちだよ)でマニアを喜ばせたが、
本作は打って変わって、かなり大作的かつ密教的に作りこまれている。
それは祈りから銃撃が起こるSEや、
厳粛な雰囲気を思わせるが同時に悄然とした印象も持つアルペジオで聴かせる等のインストゥルメンタル要素を要所要所で差し込むことで、
アルバム全体で聴かせると言った点に於いて気を使っているように感ずられた所為だろう。

また音自体についても全体の湿度が高くなっており、砂埃感のあった前作と比べて、
圧殺感やジメジメ感が強く、一聴しただけではスラッジメタル要素が判りにくい、
その代わりと言うのかは知らんが、泥感やドス黒いブラックメタル要素が割り増しされているような塩梅だ。(Indianに寄ったような塩梅)

そのような要素を踏まえた上、初めから終わりにかけて、不快と憎悪を撒き散らし不快と憎悪を撒き散らしてゆく、
この不快と憎悪の撒き散らしっぷりは半端なものではない、
聴いている者まで業腹な心持に陥ってしまうのだから、
だがしかしその陰には常に悄然とした雰囲気が纏わりついている、
要するにハイパー厭世的な訳だ。
その後も厭世の乱暴狼藉(しかし整合性はある)は続いて行くが、終盤にて、一転の光、一点の救いがその厭世と闇の果てに降り立つ。
その光が、その救いが祝福の洪水の様に感じられて、私はそっと赦されたように感じられて、私は不意に泣いてしまった。

そんな私の精神は今までどれほど荒んでいたのだろう、
なんて言う勝手な自己憐憫も沸き立ってしまう程の一級の起承転結である。

私は詰まるところ、その起承転結の素晴らしさに打ち拉がれた次第なのでございます。
正直コマーシャリティは枯れたが、それを補って余りある尖鋭性と構築美、本当に素晴らしい。

精神の暗黒面から横溢する神聖さを携えたと言える、両義性の鬼もとい、ふたなりのミイラ。
本作は暗闇の果ての神聖なる傑作である。

以下は曲目、

1. Body Choke  08:46
2. Death Mask  06:38
3. Possession Prayer  06:59
4. You Will Gag for the Fix  02:54
5. Negative Birth  07:31
6. Coil  04:16
7. Three Crosses  10:07

Total  47:11